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日本の登記簿面積と実際の測量面積が違うのはなぜ?

はじめに

日本の不動産を購入する中国人投資家の多くがまず疑問に思うのは、登記簿に記載された「登記面積(公簿面積)」と、専門家による測量で得られる「実測面積」が一致しないという点です。

同じ土地や建物なのに、なぜ数値が異なるのか?

実はこれは誤りや虚偽ではなく、日本独自の不動産登記制度や、歴史的な測量方法、そして法制度の仕組みによるものです。

この記事では、投資家の視点から、公簿面積と実測面積の違い、その背景、そして不動産取引の際に注意すべきポイントについてわかりやすく解説します。


1. なぜ日本では「登記面積」と「実測面積」が両方存在するのか?

日本の不動産、特に土地には、一般的に「登記面積」と「実測面積」という2種類の面積が存在します。

登記面積とは、法務局が管理する不動産登記簿に記載された面積のことで、公式な法的記録です。 これは「登記事項証明書」などの公的書類で確認することができます。 しかし、この登記面積が、必ずしも実際の土地の広さを正確に反映しているとは限りません。

その理由のひとつは、歴史的背景にあります。 多くの土地データは明治時代に作成されたもので、当時はロープや目測による簡易測量が主流でした。 境界線の確定も曖昧で、そうした古い測量結果が今日まで更新されずに残っているケースが多いのです。

また、登記面積は主に行政や税務上の目的で使用されます。 たとえば固定資産税や都市計画税、相続税などの計算に使われますが、市場での売買価格の算定に直接使われるものではありません。

一方、実測面積とは、土地家屋調査士などの専門家が現地でGPSやレーザー測定器などを用いて精密に測量した結果を指します。 これは「現実の土地の状態」を反映しており、開発、売買、境界確定などにおいて非常に重要なデータです。

両者の数値のずれは、古いデータのまま更新されていないこと、隣地との境界が不明瞭なこと、地形の変化(埋め立てや土砂崩れなど)、あるいは坪から平方メートルへの換算誤差などが原因で生じます。

日本の不動産登記制度は、主に「所有権を保護すること」を目的としており、登記簿は面積の正確性を保証するものではありません。 そのため、日本の土地取引では「実測売買」が一般的です。 実測面積をもとに売買価格を決定し、登記面積との違いがあれば「過不足金の精算」によって公平性を確保します。

つまり、登記面積は法的・行政的な基準であり、実測面積は市場の実態を示すものです。 この2つの仕組みを併用することで、日本の不動産制度は法的安定性と実務的な正確性の両立を図っているのです。


2. マンションや戸建てなどの建物にも「登記面積」と「実測面積」の違いはある?

はい、建物にも登記面積と実測面積という考え方がありますが、土地に比べるとその差は非常に小さいのが一般的です。

なぜなら、建物は構造が固定されており、壁や柱などによって境界が明確だからです。 

登記面積(登記簿上の面積)は、建物完成時に建築確認申請図面に基づいて登記された床面積です。

マンションの場合、各住戸の「専有部分面積」として記録されます。

一方、実測面積は、完成後に室内で再測定した面積を指します。 日本では主に2つの測定方法があります。 ひとつは「壁芯面積」で、壁の中心線を基準に測る方法(登記簿ではこちらが採用されています)。 もうひとつは「内法面積」で、壁の内側で測る実際に使える室内面積です。 そのため、登記簿の面積は実際に使える空間より少し大きく表示されるのが通常です。 これは制度上の基準の違いであり、誤りではありません。

近年の新築マンションや住宅では、建築確認段階からCADなどを用いた高精度の測量が行われており、登記面積と実測面積の差はほとんどありません。 大きな差が生じるのは、古い建物や何度も改築を重ねた物件などに限られます。

また、日本の不動産価格は、中国のように「面積 × 単価」で単純に決まるわけではありません。 地価、交通の利便性、建物品質、ブランド、管理状態、周辺環境など、さまざまな要素が総合的に価格を形成します。

そのため、数平方メートルの誤差が価格に与える影響はごくわずかです。

さらに、日本では建物に関して「実測」と「公簿」を厳密に区別する習慣はほとんどありません。 建築確認および登記の段階で既に正確な面積データが登録されており、法的にもその値が基準とされています。 したがって、実際に再測量や修正を行う必要はほとんどないのが実情です。


3. 登記簿面積が実際と違う場合、修正したほうが良い?

一部の投資家は、「もし登記簿の面積が実際と異なるなら、修正すれば資産価値が上がるのでは?」と考えるかもしれません。

しかし、結論から言えば、日本ではその必要はほとんどありません。

建物の面積は建築確認の段階ですでに精密に計算されており、登記簿に記載された面積は法律上認められた標準値です。 また、建物は物理的な構造が固定されているため、わずかな面積差が所有権や価格に影響を与えることはありません。

仮に再測量を行って登記簿と異なる値が出たとしても、修正には時間と費用がかかり、資産価値の上昇にはつながりません。

特にマンションのような区分所有建物では、1戸だけ面積を変更することは共有部分との按分の関係上、制度的にも不可能に近いです。

このように、日本の不動産市場では「登記面積=取引の標準値」として扱われ、実測面積の差異が問題になるのは主に土地取引の際だけです。

投資家にとって重要なのは、面積の数字の違いではなく、物件の収益性、立地、建築品質、法的安定性といった実質的な要素です。

面積の微調整よりも、資産の持続的な価値を見極めることが成功する投資の鍵といえるでしょう。


4. まとめ

日本の土地取引では、登記面積と実測面積の差が生じることが多く、そのため実測と差額精算を行う仕組みが整っています。

一方、建物、特にマンションなどではその差はほとんどなく、登記面積が事実上の正確な面積とされています。

まとめると、土地を購入する場合は専門家による実測を行い、建物を購入する場合は登記簿面積を基準にすれば十分です。

日本の不動産市場は、制度の透明性、データの正確性、そして法的な信頼性によって支えられています。 これこそが、多くの中国人富裕層投資家が日本の不動産を選ぶ大きな理由の一つなのです。